【読書日記】『新しい古代史へ2 文字文化のひろがり 東国・甲斐からよむ』を、読む。

【読書日記】『新しい古代史へ2 文字文化のひろがり 東国・甲斐からよむ』(平川 南) 日記
この記事は約4分で読めます。

出版不況が叫ばれて久しい昨今。
せめて、自分が読んだ本を共有することで、読むべき人の目に届くお手伝いをしていたい……

ということで、読書日記、はじめます。

基本情報

  • 書名 :『新しい古代史へ2 文字文化のひろがり 東国・甲斐からよむ』
  • 著者 :平川 南
  • 発行所:吉川弘文館
  • 定価 :本体2,500円+税

新しい古代史へ――
読む、書く、祈る――。
古代の人々が感じた文字の力

【本書の主な内容】
第一部 文字を書く
役人の文字の習熟度/文書と口頭伝達/木簡の大きさと格付け/筆・硯・墨の素材と製法/和紙の種類と製法/長さを測り、線を引く…など

第二部 人びとの祈り
屋敷神をまつる/年始めにおこなう神事/生きつづける竈神/魔よけの符号/古代の相撲…など

第三部 文字文化のひろがり
偽作とされた多賀城碑/はんこと文書行政/漆が遺した古代文書/万葉仮名から仮名へ/土器に刻まれた和歌/平仮名の成立…など

本書帯より引用

木簡、漆紙文書、墨書・刻書土器や碑文のさまざまな文字。
戸籍などの公文書にみる文字の権威や、現代にも残る祈り・まじないの原像、仮名成立を解く新たな発見など、地中から蘇った文字資料が豊かな古代社会を語る。

本書カバーより引用

経緯

映画『閃光のハサウェイ』を観た帰りに、イオンの本屋さんで買いました。

本当は別の(何年も前に見かけて買わず、ずっと「買っときゃよかったー」と気になっていた)本だけ買うつもりだったんですが、ぼんやり眺めた同じ棚にこの本があり、財布の中の千円札の枚数を思い出した私は、ふと気がつけばこちらもしっかり手に取ってレジに並んでいたのでした。
恐ろしい……

これは私見なのですが、本好きって

  • お金があって
  • 買わない理由がなくて
  • 買う理由があったら

買ってますよね……それもけっこう値段に頓着せずに即決で……

普段は豚コマ買うにもけっこう悩むのに……

ともあれせっかく定価で買ったのですから、せめて早く読まねばなりません。
帰る車の中で、私はさっそくページをめくり始めました。

感想

新聞連載をテーマ別に再編成

この本は山梨日日新聞にて連載されていた記事を加筆修正、テーマ別に編集して出版されたものです。

著者の平川南さんは、山梨県立博物館の名誉館長さんです。
国立歴史民俗博物館の名誉教授でもあり、同じ出版社から『漆紙文書の研究』『墨書土器の研究』『律令国郡里制の実像』などの本を出されています。

えー……何が言いたいかというと、こちらは大変な知識を持たれている専門家の先生が、専門知識のない人が大多数であろう新聞購読者のために書かれた文章なのです。

つまり、とっても読みやすい!

古代史初心者の私にはとってもありがた〜い本です。

全ページカラー!

……だから、高い……!

でもその分だけの価値はあります。

だってね、ほとんどのページに資料写真や図があるんですよ!? すごくない!?

これも古代史初心者の私には、理解しやすくてとても助かりました。

古代の地方行政がおもしろい

私がおもしろいなと思ったのは、律令国家での地方行政についてです。

各国には複数の郡があり、郡家では毎年郡書生が戸籍を作っていました。

戸籍は3部作られ、2部は都へ送られて、1部は国府にて保管されます。

毎年毎年、前年の戸籍を見ながら作り直すわけですが、すべて墨と筆による手書きであり、いつの間にか文字が変質してしまうことがあるそうです。同じ郷の同じ人物のはずなのに、名前が変わっちゃうんですね。えれこっちゃ。

以下、想像です。

ぬおおおおおっ!
今日は彼女と付き合って十干記念日なのに!
あのバカ上司、仕事押し付けて帰りやがってえええ!

こんなん、いちいち楷書で書いてられっか!
行書で書いちゃれ!

< 1年後 >

えー……? なに、この字? 
こんな字、見たことないんだけど……なんて書いてあるの?

……しょうがない。見たまま書くか……
……うん……うん……う……どうやって書いてるのコレ?

< さらに1年後 >

ヘッタクソな字やなぁ。
直しといたろ。
(誤変換完了!)

ダメよ、書体変えちゃ。

作品世界づくりの参考に

他にも気になるトピックが色々あります。

同時代における碑の数から日本と朝鮮半島の識字率を比較したり……とか、

「国印が擦り減っちゃったから新しいの作って」って文書が出てきたけど、実際のところどのくらい押しまくってたかーとか、

国家事業で写経をしてたから字さえ書ければ職につけたみたいだけど、実は試験が厳しかったみたいでなんで落ちたのかわかんないとか。

これがまた、当時の暮らしぶりが見えてくるようで、なかなか楽しい。

そもそも、こちらの本を衝動買いしたのは、最近書き始めた小説の資料になるのではと思ったからでした。
識字率の低かった古代日本をモデルに、漢字らしき文字から実体を具象化する不思議な能力にまつわるお話……になる予定。
資料としてもよし。読み物としてもよし。概要がつかめたのでもうちょっと深く勉強してみたくなりました。

ちなみにこちら、3巻構成の真ん中になります。

他のも気になるなぁ…

「読んだよ!」と教えてくれると嬉しいです。
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