出版のプロが書いた「あらすじ」を吟味して自作のあらすじをまじめに書いてみた。

日記
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今日は小説の話です。
……あらすじって、好きですか?

あ、公募の時にいっしょに送るやつじゃなくて、見込み読者さんに本編を読んでもらうために書くやつです。文庫本だったら、裏表紙の右上あたりや、カバーの折り返し部分に書いてある、短い文章。

そう。
映画の「予告編」的なアレです。

私はアレを書くのが、とにかく苦手で……
いま、ブログで連載している小説をTwitterでご紹介する際も、なんだかようわからん駄文を添えて空間を埋めてしまっている始末です。
いや……本当、あれで読んでくださってる方々、ありがとうございますっ!(五体投地)

さてそんな私ですが、よそ様の作品とTwitterでのご紹介を拝見していまして、ちょっと色気が出てきました。つまり、

――私も「あらすじ」ちゃんと書けば、もっと読まれるんじゃね?

マスター
マスター

ちょっと注意。
目次の1~3は、ほぼ愚痴です。
タイトルを見られて興味を持たれた方は、目次の4『読みたくなる「あらすじ」』からジャンプすることをおすすめします。長いし。
でも私は1~3が書いてて一番楽しかったヨ……

読む気がなくなる「あらすじ」

我ながら、いきなり恐ろしい項目を立ててしまった……

これはWeb小説の話です。
もっと具体的に言うと「小説家になろう」の話です。

人気のある作品はどれも実行されているようなので、多くのユーザーに喜ばれる・読者が増える手法なのだろうと理解してはいるのですが……

私は、長~~~~~~~~い「あらすじ」が、苦手です。

ありますよね。すっごい長いあらすじ。
昨今、長文タイトルは当たり前ですっかり見慣れましたけど、長いあらすじは……ごめん。むり。

読者としての私は、あまりに長いあらすじに直面すると……本編を読む気がなくなってしまうのです。

なぜなら、もう読んだ気になっちゃうから。

「だって、そのくだり、またこれから始まるんでしょ?」

……と、思っちゃう……

まぁ、だったらあらすじ読まずに本編読めよ、って話なんですが、そうすると本来の「あらすじ」の機能を自ら放棄するわけで……ちょっと知りたいから「あらすじ」読もうとしたわけだし……うーん、モヤモヤするぅ~

考えるに、「あらすじ」には適正な長さがある、気がする。

あと、「あらすじ」の中で本編進行のどこまで書くか、も重要な気が、する。

これはWebではなく文庫本の話なんだけど。
っていうか、たまたま家にあった『三毛猫ホームズ』の話なんだけど。(お義姉さんがくれた)

本編を頭から読んで、どうやら主人公格らしいお嬢さんがデパートで再会した級友はどうも政治家の愛人をやっていてその秘書の大事な手帳を主人公格らしい刑事がかつて助けたスリの爺さんが手癖でスッちゃって(読み飛ばしていいよ)その娘さんが「しょうがないから拾ったって言って返してくるよ」と秘書を訊ねて事務所に行ったんだけどたまたま遭遇した例の政治家が嫌そうなやつで一方なにやら愛人はやっかいごとに巻きこまれているらしく猫を可愛がっているお嬢さんに助けを求めてくるという……

ここまで読んで、私は裏表紙の「あらすじ」を読みました。


……予言書だった。

いや、違う。あらすじでした。
でも、けっこう事件のきっかけになりそうなとこまで読んだと思ってたのに、まだまだ先であろう未来のエピソードが書いてあって……

……読んでない。

…………ごめん。

読まなきゃよかった「あらすじ」

もうひとつ、私には読んだことを後悔した「あらすじ」があります。

それは米国で大ベストセラーにもなったらしい『イエスの遺伝子』……
あのディズニーが実写映画化の権利を購入し、塩漬けにされている、『イエスの遺伝子』……

これは最後まで読みましたよ!
控えめに言って、すっごくおすすめです。おもしろい!
冒頭からハラハラドキドキの展開で、文庫では上下巻なんですけど、夢中になって読みました。心をなくした美しい殺し屋が出てきまして、彼女の魅力にも惹かれますし、もちろん表題である「イエスの遺伝子」とは何か、イエスが起こしたという奇跡の秘密とは……という謎解きも極上品です。

……で、ですね。

すっごい、すっごい、楽しみにしてたんですよ。
下巻を読むのを。
だって上巻がものすごい気になるところで終わったから。読まずに死ねるかみたいな気分で、よくぞ上下巻で買ってきたぞという勢いで手に取りましたよ。はーあ。

なーんで「あらすじ」読んじゃったかなぁ……

そこは!
上巻のおさらいでいいじゃん!

なぜ、ネタバレする!

その結果が気になってこれから読むのに……!

これから『イエスの遺伝子』を文庫・上下巻で読む皆さんへ。
下巻の「あらすじ」は絶対! 読んじゃ! ダメ!

マスターとの約束だぞ★

「あらすじ」ってやっぱり必要?

……ふぅ。

ついつい長年の鬱憤を爆発させてしまった。反省反省。

さて、ここまで書いといてなんですが「あらすじ」はやっぱり必要だと思う。

なぜなら私たちは「あらすじ」を読んでその本を手に取るか決めるし、手に取ってもらわなければ、中を開くことも、読んでもらうことも、ましてお金を出して買ってもらうこともできないから……

必要だから出版社側も、頭を捻って「あらすじ」の文章を考えているんだと思う。

そして琴線に引っかかった我々が、財布に金があるという理由ひとつだけでレジに向かうという……まぁ、あらすじだけで決めるわけじゃないですけどね。

「あらすじ」は、やっぱりあった方がいい。

でも、どう書く?

読みたくなる「あらすじ」

「学ぶ」とは「真似ぶ」

はいこちら、どなたが言い出したのか存じませんが、私の好きな言葉の一つです。

絵も小説も、最初は真似から始まりました。
自分のいいと思うものを、まずよく見る。真似てみる。

よく「あらすじ」がついているのは、文庫本です。単行本だと装丁を優先してか帯に書かれていることが多いですね。
ちょっと本棚を漁ってみましょう。

純文学の「あらすじ」

まずは純文学のあらすじから見てみます。
とはいえ、すごーく同じくくりに入れるのが気まずいラインナップなんですが……まぁいいか。

捨子ではあったが京の商家の一人娘として美しく成長した千重子は、祇園祭の夜、自分に瓜二つの村娘苗子に出逢い、胸が騒いだ。二人はふたごだった。互いにひかれあい、懐かしみあいながらも永すぎた環境の違いから一緒に暮すことができない……。古都の古い面影、移ろう四季の景物の中に由緒ある史蹟のかずかずを織り込み、流麗な筆致で描く美しい長編小説。

『古都』川端康成

人間関係を華麗にさばき、みんなの憧れのマリ子を彼女にする桐谷修二は、クラスの人気者。ある日、イジメられっ子の転校生・小谷信太が、修二に弟子入りを志願するが……はたして修二のプロデュースで、信太=野ブタは人気者になれるのか⁈ TVドラマ化もされた青春小説の決定版・第41回文藝賞受賞作。

『野ブタ。をプロデュース』白岩玄

まあ。なんということでしょう。

これは意図されてのことなでしょうか。
文章作成の基本である5W(いつ・どこで・だれが・なにを・どうして)が、この短い文章のなかにしっかりと込められています。

例えば『古都』ならば、「古都・京都にて、祇園祭の夜、捨子だった千重子は自分に瓜二つの村娘苗子に出逢う」といったところでしょうか。
さらに「ふたごでありながら一緒に暮らすことができない」という主人公の抱える課題・問題も提示しています。

『野ブタ。をプロデュース』はもっとわかりやすいですね。
「ある日、クラスの人気者・桐谷修二は、イジメられっ子の転校生・小谷信太から弟子入りを志願される」が物語のきっかけであり、課題・問題は「修二のプロデュースで=野ブタは人気者になれるのか」になります。

一方、あらすじのなかにHow(どうやって)が書かれていないのは、小説本編でそれを語るからでしょう。
『古都』なら、突然の再開を果たしたふたごの苗子とどう向き合うか。
『野ブタ。』なら、修二がどのように信太をプロデュースするか。
ここが読ませどころであり、これをあらすじで開陳してしまうと、私はまた本を投げるのでしょう……はっはっは。

エンタメの「あらすじ」

さてさて、今度はエンタメ小説のあらすじを見てみましょう。

アメリカ南部の田舎町。綿畠の実が弾ける季節になると、すべてが白い荒野へと変わる。六度目の夏の雪だった……。時が止まったような黒人街の片隅で、壊れた時計の修理を生業に暮らす一人の日本人。バラを育てながら孤独に生きる男が、一年に一度だけ引き受ける特殊な仕事とは。異国の土に悲しみの鮮血が染みてゆく、衝撃のハードボイルド長編。

『いつか時が汝を』北方謙三

人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」で、世継ぎである若宮の后選びが始まった。朝廷で激しく権力を争う大貴族四家から遣わされた四人の后候補。春夏秋冬を司るかのようにそれぞれ魅力的な姫君たちが、思惑を秘め后の座を競う中、様々な事件が起こり……。

『烏に単は似合わない』阿部智里

前2作と比べると、だいぶ雰囲気が違いますね。

まず、主人公の名前がない。

ただしこれは、各作品の特性によるようです。
『いつか時が汝を』の主人公は、「アメリカ南部の田舎町、黒人街の片隅で、壊れた時計の修理をしながら孤独に生きる日本人の男」です。ただし、色々な顔を持つ人物であるため、わざと名前を出していないのではないかと思います。
もう一作、『烏に単は似合わない』はまた別の事情で主人公の名前が出せません。というか、誰を主人公と呼べばいいのやら……気になる方はぜひご自分でお確かめください。

さて、『古都』や『野ブタ。』と比べて、感じる違いがもうひとつ。

それはどちらも、短い文章の中で作品の「雰囲気」を感じさせる点です。
前の2作が、作品本編の要約、まさにあらすじだったのに対し、こちらは「アメリカ南部を舞台にした孤独な男のハードボイルド長編」、「和風ファンタジーを舞台に繰り広げられる絢爛豪華・権謀術数蠢く王宮ミステリ」と、この作品を読めば体感できる雰囲気や世界観を教えてくれます。

ちょっと(最後に紹介する)漫画のあらすじに似ていると思うのは、私だけでしょうか?

ラノベの「あらすじ」

続いて、ちょうどエンタメと漫画の中間、ラノベのあらすじを見てみましょう。

「てめえいいかげんフザケタことばっか言ってっと、ローラーでひき殺すぞ!」
 俺は心地よい眠りから、罵声でたたき起こされた。俺の名はオーフェン。本業は魔術士だが、副業でモグリの金貸しなんぞをやっている。
 罵声の主はボルカンという地人のガキだ。俺から金を借りているくせに、ちっとも返そうとはしやがらない。
 このガキがどうやら、金儲けの話を見つけてきたらしい。あまり、アテにはできないが、とりあえず奴に言われたとおり盛装して、とある金持ちの屋敷にやって来たのだが……そこで、俺はあいつに出会ったのだーー。
 期待の新鋭が描く、コミカルでシリアスなハイブリッド・ファンタジー!

『魔術士オーフェンはぐれ旅 我が呼び声に応えよ獣』秋田禎信

 サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。
 そうーー表向きは。
 本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。《存在しない“第86区”》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《有人の無人機》として戦い続けていたーー。
 死地へと向かう若者たちを率いる少年・シンと、遥か後方から、特殊通信で彼らの指揮を執る“指揮管制官”となった少年・レーナ。二人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まるーー!
 第23回電撃小説大賞《大賞》の栄冠に輝いた傑作、堂々発進!

『86-エイティシックス-』安里アサト

うん。長いね!

上の例は、新旧のヒット作から引用してきたものですが、純文学やエンタメと比べると明らかに、長い!
これはラノベのメインターゲットが(一応)10代の少年少女に設定されているのと関係がありそうです。本を買う、読んでもらうハードルを下げるために、あらすじからすでに面白さを追求しているような……
あらすじなのに、すでに物語が始まっているかのような情報量です。

興味深いのは『オーフェン』の場合、主人公の一人称であらすじが書かれていること。作品本編はハードボイルドに影響を受けた三人称なんですが、10代へのアプローチと考えると、たしかに一人称の方が取っつきやすいように思えます。
あと、この年代のアニメって、冒頭から主人公が自己紹介したり、次回予告の時に名乗ってから話し始めるイメージがあります。当時すでに一種の様式美と化していたのかどうか、私はアニメはあんまり見てない方なので適当ふかしてますが。うーん、はたして?

対する『86』はというと、独自設定用語バリバリ。悲劇的な結末を予感させるドラマチック要素をてんこ盛りで煽りに煽ったあらすじです。
これぞまさに、映画の予告編のよう。
ハリウッドとかで実写映画化した場合、だいたいこんな予告編ができてくるんじゃないでしょうか。出てきてほしいな。というか、実写化してほしいな、海外で!

さて。
この2作に共通するのは、主人公の名前と所属が書かれていることです。
次の漫画のあらすじとよく似ていますね。

漫画の「あらすじ」

最後に漫画のあらすじを見てみます。

ジャズに心打たれた高校3年生の宮本大は、川原でサックスを独り吹き続けている。
雨の日も猛暑の日も毎日毎晩、何年も。
「世界一のジャズプレーヤーになる…‼」
物語は仙台、広瀬川から始まる――――

『BLUE GAIANT』1巻(石塚真一)

27歳、会社員の日々野鮎美は、「山ガール」と呼ばれるのを嫌う自称単独登山女子。
美味しい食材をリュックにつめて今日も一人山を登るのでした。
読むとお腹がすく&山に登りたくなる!
アウトドア漫画の決定版!

『山と食欲と私』1巻(信濃川日出雄)

どうやら主人公の名前・年齢・職業は外せない情報のようです。
さすが、キャラクターが命の漫画といったところでしょうか。

さらに、主人公の個性もわかりやすい!
『BLUE GAIANT』 なら「世界一のジャズプレーヤーになる…‼」と大きな目標を。
『山と食欲と私』 なら「『山ガール』と呼ばれるのを嫌う自称単独登山女子」と鮎美ちゃんの微妙な乙女心?を。
それぞれが、自分はどういう存在になりたいかを明らかにしています。

あと注目したいのは、作品のウリとなる部分
『BLUE GAIANT』 なら、ジャズ、サックス、仙台、高校3年生……あたりでしょうか。地方都市から世界へ続く青春ストーリーを予感させます。(そして実際、そのとおりに進行中)

一方の 『山と食欲と私』 は……そのままですね(笑)
そもそもタイトルが秀逸だと私は思うんですけど、あえて「あらすじ」の中から抜き出すならば「アウトドア漫画の決定版!」 これに尽きる。
くわえて毎回の基本の流れ=ひとりで山に登ってご飯を食べる、という単純かつ魅力的なストーリーがダイレクトに伝わってきます。これ書いたやつ、どんだけこの作品売りたいねん(買うけど)。

「あらすじ」書いてみた。

さーて。
少ないながらも色々見比べてみたわけですが、いくつか有益な情報を得ることができました。

  1. 主人公の名前を入れる。
  2. 5Wでまとめる。
  3. How(あるいは謎)は書かない。
  4. ジャンルを決める。
  5. 作品のウリを決めて推す。

……こんなところでしょうか。
では拙作『少女は血縁に依りて具象する』のあらすじを書くにあたって、必要なポイントを洗い出してみましょう。

  1. のぞみ
  2. 古代、国の形がまだ定まりきらぬころ、郷で暮らす少女・のぞみの前に、存在も知らされていなかった兄・ときはねが現れた。兄に才を見出されたのぞみは、いま、都へと旅立つ――!
  3. 都までの旅路
  4. 古代ファンタジー
  5. 古代、ハイファンタジー、兄妹、呪術(的な何か)

はい!

呪術(的な何か)について言いたい人がいるかもしれないので先手打ちます。
乗っかってますよそれがなにか?(怖い)

ともあれ、ウリの貧相さは脇に放置しつつ、あらすじを書いてみました。

かつて、鉾から滴り落ちしこの国の、形がまだ定まりきらぬころ。
郷人から「できそこない」と言われて暮らす少女・のぞみの前に、生まれてすぐ養子に出された兄・ときはねが現れる。
少女はそのとき初めて兄の存在を知り、自らが刻み続けてきた線の意味を知るのだった。
美しく才知あふれる兄に導かれ、都へと続くのぞみの旅が今、始まる――!
古代呪術ファンタジー、ここに開幕!

連載小説『少女は血縁に依りて具象する』 あらすじ

どうかなぁ。適度に(公開前の)ネタバレを避けつつ書けたと思うんだけど。どうかなぁ。はーあ。

もし、このあらすじで触手が動くという方は、ぜひ読んでみてください。

では!

「読んだよ!」と教えてくれると嬉しいです。
  • 読んだよ! 
  • また今度! 
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