私的小説の書き方 2019年版

「なろう」になじめない中年作者が思ったことを書くエッセイ 「なろう」になじめない中年作者が思ったことを書くエッセイ
この記事は約6分で読めます。

このエッセイは、小説家になろうでの連載作品を一部改稿のうえ転載したものです。
 その点をご留意の上、お読みください。

世間には「小説の書き方」にまつわる情報があふれている。

名の知れた作家の「文章読本」は数多く、一方で批判も多い。
またGoogleで「小説の書き方」と検索すれば、ヒットするページは約6,170,000件。書籍の紹介も含むだろうが、すべてに目を通すことはとてもできない。
「小説の書き方」を教える大学、専門学校、カルチャーセンターも増えた。こちらも当然ながら、すべての教室に足を運ぶことなど、できるはずもない。

なにが言いたいのか。

私が言いたことはひとつだ。


「好きに書けばええやん」

もちろん好きに書いて読者の称賛を得られるかどうかは別問題である。
ノウハウが知りたければ学べばいいし、クソくらえと思えば自分の思うままに書けばいい。

目を向けるべき場所は、他にあるのではないか。


私にとって、2019年はそれなりに充実した一年だった。
年間を通して(量は少ないけれど)書いていたし、先日は(ほぼ一年ぶりになるが)(短編だけど)1作は書き上げることができた。(カッコ内は見ないようにしよう)

そして何よりも、意識して書くことができた。

今年、私はおおよそ3本の小説を書いた。

(1)SF風味の純文学
(2)ほのぼの実験小説
(3)ほのぼのダークな怪奇小説⇒「凍る心中」

ちなみに、番号は書き始めた順番である。
(1)(2)はいまだ執筆中で、(3)が先日書き上げた小説だ。「小説家になろう」と「カクヨム」で公開している。公開している!(圧迫宣伝)

最も文量を書いているのは(1)だ。去年の暮れから書き始めて、現在30,400文字ほど。
(2)が10,000文字弱。(3)が約10,200文字だった。
1年でこの文量は少ない方だと思う。けっして胸を張れるような数字ではない。
(来年の目標は120,000文字……1年で長編1本書きあげられるくらいの筆力パワーが欲しいものである)

ただし、今年に限って、文量は重要ではない。

意識したのは、それぞれに書き方を変えたことだ。

(1)PC、Word、縦書き(40字×40行)
(2)PC、「小説家になろう」、横書き
(3)PC、Word、横書き(20字)

まずデバイスについて。
スマホとポメラは諦めた。

そもそも、中年がスマホで長文を書くのは難易度が高すぎる。

というのは(半ば)冗談で、キーボードの方が思考に近いスピードで詳細に書くことができるからだ。「詳細に書く」には通常変換と推測変換の適宜使用がカギになる。最近はPCにも推測変換機能がついていて、両者のいいとこ取りができるのが非常にありがたい。

ポメラにもキーボードはついている。
しかし我が家のポメラは変換機能が「残念」で、私には合わなかった。残念。

 * * *

次はソフトウェア(アプリ)について。
私は長らくWordで小説を書いてきた。作風に合わせてフォントを変えたり、文字組を変えたり、Wordを使うメリットはたくさんある。

だが、世は小説投稿サイト乱立時代。
せっかく「小説家になろう」を利用していることだし、サイト内の機能を利用して書いてみようと思った。それが上記の(2)。

PC×Wordの場合、基本的に特定のPCで執筆することになる。サーバーやUSBメモリを利用して、複数のPCで作業を進めることもできるが、バックアップの管理などを考えると、ちと面倒くさい。
ならばサイト内の機能を利用して、どのPC・スマホからでも執筆できるようにしよう、というのが狙いだった。

結果は……毎回、同じPCで執筆している。
先の理由もあって、スマホで執筆することもほとんどなかった。

それに加えて、上記(2)の10,000文字弱は、おそらくそのまま投稿できない。
Webで読むには文字が詰まりすぎている。文章自体は、横書きでも気にならない書き方になっていると思うのだが、一行あきを入れるのを忘れていた。というか、いつもの調子で書いていた。

これはWordにて横書きで書いた(3)も同じである。
公開しているのは、完成後に一行あきを適宜追加してから投稿したものだ。
(ちなみに、約10,200文字を分割・連載するのは「なろう」では諦めた)
(ちなみに「カクヨム」では分割・連載した)
(すべてはロイヤリティへの期待のためである……合掌)

 * * *

最後に縦書きと横書きについて。

前述のとおり、私は長らくWordで小説を書いてきた。上記のテンプレで言うなら、

(0)PC、Word、縦書き(20字×40行×2段)

ちょうどA4用紙に、400字詰め原稿用紙4枚分が収まるフォーマットである。
投稿用や課題の作品を書くには、原稿用紙換算で文量をつかんだ方が都合がよかったのだ。

だが、今年の春に「小説家になろう」に投稿してみて、私の中に疑問が生まれた。

縦書きと横書きで、読みやすい文章は違うのではないか?
縦書きと横書きで、書きあがる文章は違うのではないか?

検証するなら、実際に横書きで書いてみるのが一番だと思った。
(2)(3)を横書きで書いたのは、そういう理由でもある。

先日、それぞれの文章を「文体診断ロゴーン」(http://logoon.org/)で検証してみた。

その結果、横書きで書いた(2)(3)は、平均句読点間隔が短くなることがわかった。

(0)15.24文字、偏差値44(参考例)
(1)15.43文字、偏差値44
(2)13.37文字、偏差値39
(3)12.79文字、偏差値37

「平均句読点間隔が短い」とは、文の書き出しから句点(。)までの間に、多めに読点(、)を打っているということだ。また、一文あたりの文字数が少ない場合も、平均句読点間隔は短くなるだろう。

この結果に符合するように、助詞の出現率にも有意な差が見られた。

(0)31.18%、偏差値59(参考例)
(1)31.39%、偏差値60
(2)28.98%、偏差値47
(3)28.53%、偏差値45

細かく見れば、差が出た項目は他にもある。
ただ、描いている物語が違う上、一人称と三人称の差、語り手の差などを考えると、縦書きと横書きによるものとは考えづらい。


横書きで執筆すると、助詞が減り、平均句読点間隔が短くなる。

ということは、

横書きで読みやすい文章とは、句読点間隔が短く、助詞の少ない文章である。


ちなみに、作品応募のために(3)を縦書きに組みなおしたが、特に違和感は感じられなかった。
最終的に縦書きで出すか、横書きで出すかに関わらず、わかりやすい文章を書きたい場合、横書きで書きすすめてみるといいかもしれない。

「小説の書き方」なんてのは、人それぞれだ。

だからこそ、自分がどうやって書いているか、どんなものを書いているかが、重要なのではないだろうか。

新しい課題も見えてきた。
来年も意識して、良い年にしていきたいものである。

2019年の<br>マスター
2019年の
マスター

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

本文中でも紹介しております「文体診断ロゴーン」ですが、筆者とは全く関係ない善意・無料のステキなサイトです。
ご興味のある方は、ぜひ一度ご利用ください。

2019年は、こちらが最後の投稿になるかと思います。
皆さま、よいお年をお迎えください。

「読んだよ!」と教えてくれると嬉しいです。
  • 読んだよ! 
  • また今度! 
タイトルとURLをコピーしました