『卵と月と目玉の関係』

小説
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マスター
マスター

大事なことなので、先にお伝えしておきます。

この物語は、フィクションです。

マスター
マスター

あと、2003年前後の時事ネタが含まれております。
「あのころのマックは安かったなぁ」
「あのころのマックのバンズは冷たかったなぁ」
などと懐かしさに浸りならお読みください。

 ズンチャッカ、ズンズン、チャッカ……♪

「どうも、またまたやってきました。バーニングです~」
「俺は今年も怒っとる!」
「なんやねん、いきなり。それに今年て」
「秋になって、俺の大嫌いなやつがまた懲りずに戻って来た! おい、お前! 今日なに食ってきた?」
「なにて、マックの月見バーガーやけど。いや、初物ってのは何にしろいい……」
「あほか――――ッ!!!」
「んあっ!? びっくりするやないか。なに?」
「お前がまっ先に食ったら、俺が今から言うことはどうなる? この腐れ芸人が――ッ!!」
「腐れまで言うことないやろ」
「いいや、腐っとる! あんなもんで月見気分を味わおうなんぞ、芸人どころか日本人失格や!」
「そこまでいくかい(笑)。そりゃ、『ススキに団子』って伝統からは外れとるかもしれんけどな、お前かて昨日、おれの隣で月見うどん食っとったやないか」
「どあほう! 一緒にすな、ボケ!」
「なんでや?」
「お前、よう考えてみぃ。月見バーガー食って月見ができるか?」
「…………???」
「あんなもん、月見じゃない! あれのどこが月見だ!」
「だから卵のとこやろ?」
「……っ、カ――――ッ!! お前は本ッ当に、何にもわかっとらん! あいだに挟まっとったら、月っぽいもんも見るに見れんやないかっ!!」
「……ああ、なるほど。そう言えば、まあそうやなあ」
「言っておくけどな、黄身の割れた月見うどんも同罪やからな! 品川駅のうどん屋のばばあ! 今度やりおったら店の前で小便したるから覚悟しとけ!」
「いやいやいや、その前に駅員に捕まるから……」
「カス芸人は黙っとれ!」
「頼むからまた人気落とすようなことするなよ?」
「そんなもん元からないわ! あきらめろ! いいか、月見うどんやら月見そばってのは、卵の黄身を見て月見気分になるから、『月見』って言うんや」
「言ってることは正論ぽいんやけどなぁ……」
「だからマックの月見バーガーは詐欺や!」
「ちょっと待てぇいっ!」
「お前らも言え! 叫べ! ほら、金返せ! 金返せ! 金返せ! ――っだ! 何する!?」
「痛っ! そらこっちの台詞や! マクドナルド敵にまわしてどうする!?」
「かまわんやろ。お前俺たちがいつか、マックのCMに出れるとでも思っとるんか? あそこはネズミの仲間とピエロとガキどもしか採用せんのやぞ!」
「ミッキー、ネズミ言うな!」
「中尾彬だってネズミ言っとるわ! 世のバカップルとガキは全員眼を覚ませ! ディズニーランドは日本一のネズミの巣窟やぞ!」
「あほ! 王様のブランチも出れんなるやないか!」
「知るか! お前らよく聞け! バーニングは、マックもディズニーも嫌いだ――――!!」
「違います違います。もう、大好きです! 食うに困ったときはよくお邪魔しました」
「大体、あのぬるいパンはなんだ! 熱いか冷たいかはっきりしろ! それからモスバーガー! お前のところは高いうえに遅い! 最悪だ!」
「いや、嘘ですから。一度食いに言った時はベタ誉めしてましたから。あははは……おいコラ!」
「ウェンディーズは窓ガラスの女が気に入らん! ハンバーガーはやっぱりロッテリアだ! ていうか、ロッテ! がんばれロッテ! 負けるなロッテ! 合併反対! バレンタイン監督最高――――!!!」
「お前、どうすんだよ。こんだけ企業敵にまわして。仕事来なくなるぞ」
「バカが! こんだけしとかんと、ロッテからオファー来んやないか! ……よぉし、お前ら! 耳かっぽじってよく聞けよ!」
「…………はぁ」
「バーニングはディズニーランドが嫌いだ――! あそこは頭のおかしいカップルが多すぎる! ハーモニーランドも同列! 花屋敷は古臭い! 後楽園のジェットコースターは昔俺を泣かせよった!」
「すいません。もう帰ります。ほら、行くぞ」
「遊びに行くならロッテワールド! ぺ・ヨンジョン! だってきっと行くぞ! ロッテワールド最高――……」


 プツッ……

 男は無言でテレビを消すと、せんべい座布団から立ち上がった。火にかけられたままの、フライパンの蓋を開ける。
 顔を直撃する熱気。男が顔をしかめた。眼下の目玉焼きを見つめ、つぶやく。
「――なんで目玉焼きは目玉焼きなんだろう?」
 なぜなのか。頭の中を、先刻の漫才が巡る。丸い卵の黄身が月なら、どうしてこれは月見焼きと言わないのか? いや、逆にどうしてうどんの卵は、目玉ではなく月に例えられたのだろう? ……目玉うどん、目玉バーガー……イメージが悪いからか? いやしかし、それを言うなら目玉焼きだって残酷そのもののネーミングでは……うーむ…………
 熱せられたままの卵は、しだいに水気を失っていく。


 男の思考も、自称ベテランお笑い芸人のネタ同様、
 オチはつきそうになかった。

— 了 —

マスター
マスター

とても大切なことなので、もう一度。

この物語は、フィクションです。

そしてマックもモスもロッテリアもウェンディーズも大好きです。
(私の世界線にバーガーキングはない……)

この作品は2003年頃、とある同人誌に別名義で掲載したものを改稿したものです。(捜さないでください)
アイキャッチ画像は、『ぱくたそ』さんの写真を使わせていただきました。感謝。

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