百合小説『聖女様から「私の勇者様に限ってそんなことあるはずないんですけど探ってきてください」と頼まれました。』ができるまで。

百合小説『聖女様から「私の勇者様に限ってそんなことあるはずないんですけど探ってきてください」と頼まれました。』ができるまで。 日記
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つい、この先日のことです。

私はこのブログで連載している長編小説(現在は非公開)の執筆の手を止め、百合小説を書いていました。

これが想像以上に楽しかった……!
「お題をもらって」というのがよかったのか、もともと読み手として好きだった「西洋異世界ファンタジー」だったから楽しめたのかわかりませんが、気づけば普段の倍速くらいで書いてました(笑)。
メインの作品も、これくらいチャカチャカ書けたらいいのにね……!(泣)

そして……今度は、再開した執筆の息抜きに、この日記を書こうとしています。
(注・石を投げてはいけません)

どなたかの創作の一助になれば、幸いです。

はじまりは「三題噺」&「世界観リクエスト」

ことの起こりは、2022年1月10日。
専門学校時代からのお友だち、真早樹さん(以下マサキさん)のツイートでした。

オリジも書きたい……
紙弥さんまた私と学生時代みたいな企画しないかい?

あ。補足しますと、私たちの出会いは、エンタメ系のライターやクリエイターを育成する専門学校でございます。学生時代はクラス内で短編集を作ったり、学校内のサークルで合同誌を作ったり、いろいろしていたのです。以上補足終わり。

ツイ廃ぎみのわたくし、すぐに応じてトントン拍子に企画は進み、〆切と枚数が決まりました。

【枚数】ワード初期設定(40字36行)で8枚以上10枚以下
【〆切】30日後 = 2月9日(10日提出)

ふむふむ。この枚数なら、毎年応募しているみさと文学賞よりも少ないボリュームになりそうです。(みさと文学賞は、12,000文字以内)
およそ3週間ほどで書き上げた経験から、私にも十分こなせそうです。

みさと文学賞について気になる人は、↓を読んでね!

また、10,000文字程度で仕上げれば、ちょうど参加していたBBコミュニティで編集さんからの感想をもらうこともできます。

BBコミュニティについて気になる人は、↓(以下略)

よしよし、これでいこう!

さて、次は肝心の企画です。

ワイ「企画はどうしようかねぇ。マサキさん、やりたいことある?」

マサキさん「久々に三題噺はいかが?」
「プラス世界観はお互いに書いてほしい世界観(舞台設定)で(例:異世界、現代、都会、田舎、学園など)」

ワイ「いぇーい。 私、マサキさんの学園もの読みたいー(о´∀`о)」

そんなこんなで、お互いのお題と世界観が決まったのでした。

マサキさん:【現代学園もの】フリクションペン/鳥居/ステップ
ワイ:【勇者&聖女】初恋/遺跡/ゴシップ記者

プロットを書いて、編集さんに見てもらおう!

こうして、ふたりだけの創作企画はスタートしたのでした。

……が、実はこの時点で、私にはマサキさんには秘密の企みがありました。

それは前々から気になっていた「百合小説」を書くこと……!

おりしもpixivでは「第4回百合文芸コンテスト」の真っ最中。
応募規定にもいいぐあいに合致しており、こいつぁのっからないわけにはいきやせんぜ!
(松田は公募の類を、祭りと勘違いしているきらいがあります)

というわけで。
私はとりあえず考えたお話のプロットを、BBの編集さんに見ていただくことにしました。
(本文だけでなく、プロットでも感想をもらえるんですよ! いいでしょ!)

で。書いたあらすじとプロットがこちら。
もう原文まんまで載せちゃいますね〜

【1月1本目 プロット感想をお願いします】
①タイトル
『聖女は勇者に恋をする』(仮)

②あらすじ
「勇者様が泊まる廃墟から、たびたびグッタリした若い娘が出てくるそうです。真相を確かめてきてください!」
 聖女の依頼は、恋する勇者の身辺調査だった?
 ゴシップ記者は人気者の勇者を追いかけ、その知られざる秘密をつかむ。
「お、おんな?」
 こんなのユリ!?な聖女×勇者ラブコメ前日譚、こっそり誕生!

③プロット
 魔王の出現により、世界は仄かな不安に包まれている。
 王都。ゴシップ記者が極秘に神殿へ招かれる。呼び出したのは、神秘の力を宿し、勇者に神の福音を授けた聖女。聖女は記者に、恋する勇者の身辺調査を依頼する。聖女は鳥の声を解し、神殿にいながらにして勇者の旅路をストーキング……見守っていた。「勇者様が泊まる廃墟から、度々若い娘が出てくるそうです。真相を確かめてきてください!」勇者は線の細い美男子である。大変な人気があり、世の女性のハートを鷲掴みにしている。半面、年頃の一部同性からはやっかみの声もあり、記者は勇者の醜聞をスクープとして売り込もうと考える。依頼を受け、王都を出る。
 勇者は仲間もいない一人旅。記者は街の酒場で勇者に接触、探りを入れる。が、まったくボロが出ない。尾行する。勇者が郊外の廃墟に入る。しばらくして若い娘が出てくる。いつの間に? 疑問を抱きつつ、声をかけて気がつく。娘は勇者だった。
 再び酒場にて。誰も勇者に気づかない。記者はスクープの嬉しさよりも、なぜか居心地の悪さを感じる。娘になぜ勇者をしているのか訊ねる。娘は伝説の勇者の血統である。勇者になる可能性を踏まえ育てられ、魔王が現れたから勇者になった。だが、伝承の勇者は例外なく男の姿で描かれている。だから、常日頃は男として振る舞い、大衆浴場に行く時だけ女の姿に戻るのだという。驚く記者。
 記者が聖女の依頼を話すと、娘はこの件は内密にしてほしいと頼む。なぜ性別を偽ってまで勇者を名乗るのか。娘には勇者の誇りがある。また、女の自分では人々は安心できない。
 勇者の言葉に、記者は自分の後ろめたさに気づく。これまで、魔王など自分には関係ないと思っていた。勇者や軍人など戦える者が戦い、それが彼らの義務だと。だが実際の勇者は実は若い娘で、彼の中では守られるべき属性だった。自分は、自分よりずっと若い娘に、魔王との戦いを押しつけている。しかし、娘が勇者である事実は変わらず、娘もまた現状維持を望んでいる。聖女以外に真相を漏らさぬことを誓い、記者は王都へ戻る。
 神殿。鳥の見た娘が勇者だった事実を報告すると、なぜか聖女はガッツポーズ。「愛する人が男だから、女だからなんて関係ありません。私はあの方が勇者だから好きになったんです。だって聖女と勇者は結ばれるものでしょう?」そう胸をはる聖女から、記者は次なる諜報……依頼を申し込まれるのだった。

えーっと、お題からどう発想したをちょっと書いときます。

【登場人物】①勇者、②聖女、③ゴシップ記者
【舞台】廃墟……だけど、まあこだわりすぎない感じで。
【関係性】初恋……聖女が勇者に恋をする方向で。聖女✗勇者+ゴシップ記者

百合にしたいので、勇者は女の子になりました!
一方の聖女は、プロット時点ですでにかなり個性的なキャラクターに……

プロットを読んでくださった編集のヒダマルさんも、聖女のキャラクターに可能性を感じられたようでした。
いただいた感想もそのままご紹介します!

ヒダマル(編集)さんより
拝読しましたので、感想をお伝えします。
「聖女が勇者にストーカーしてる」という状況がクスッと笑わせます。勇者への身辺調査が始まる、若い女の正体は勇者本人だったと、期待と意外性が綺麗です。惜しむらくは、聖女の出番が極端に少なくなりそうな点です。1万文字ならまぁそうなるか、前日譚らしいし、とは思いますが、聖女のキャラがすごく立っていそうなので、ややもったいないかなとも。同じ理由で、記者のキャラが如何に楽しいか、応援してもらえる印象を持たれるかによって、面白さが大きく変わってきそうです。最も出演しているので。事実上の主人公です。
記者を主人公にしないためには、聖女がついてくる他ないかと。聖女のキャラを忘れさせないためなら「小鳥に定期連絡する(小鳥が聖女人格で喋れるとなおいい)」を挟む程度でも大丈夫ですが、「勇者×聖女の百合」をメインに描くとなると、出演者のバランスが難しそうです。
視点主人公に記者、主人公に聖女、その相手役に勇者という形にすると馴染みそうかなと思います。のび太とドラえもん、キョンとハルヒ、戯言遣いと玖渚友のような(物語上の)関係です。一般的な感性を持つキャラが、特異な感性を持つキャラの言動を見ている、という構図はよくあります。「勇者の真実を知っても気持ちを変えない聖女」は主人公らしい貫き方ですし、勇者にとっておそらく嬉しい言葉なので、直接伝えられたら盛り上がりそうです。
聖女は転移魔法を使えるけど魔力消費が半端なくよほどの事態じゃなければ使えないので記者を雇うしかない、という前提を置いた上で、勇者が秘密を話して「女の身では人々を安心させられない」とか涙を流したときに転移魔法で現れて直接伝えるといった意外性、前フリと回収があると、全体がまとまりそうです。

赤字は、私がとても参考になったなと思った部分です。

正直、プロット時点で読んでいただけたことで、作品の完成度が格段にあがったと思っています。

ヒダマルさん、ありがとうございます……!

感想からのエピソード追加、そして本文執筆

編集さんからの感想ってすごいですね。
BBでは、この感想サービスの上位互換である個別編集サービスがあるのですが、いったいどれだけアドバイスしてもらえるんでしょうか。ワイにはまだ想像もできない世界です。

いただいた感想を読んで、むむむーと思いつつ風呂に入り、新しいアイデアが浮かんできました。

もちろん、アドバイスや提案をすべて容れることはできません。
プロットには表現できていなくても、作品の中で動かしたくない部分があったりしますから。
でも新しい視点を通すことで、新しいキャラクターの顔が見えてくるのが、楽しい(о´∀`о)エヘー

以下は、編集さんに折り返した追加のアイデアです。
この方向性で本文執筆に臨むことにしました。

勇者を尾行中、フラフラの鳥が記者の肩にとまる。
鳥は、聖女からの手紙と預かり物を持って、王都から飛んできた。
《愛しい私の勇者(記者殿も可)に危険が迫りしとき、清らかなる処女の涙をこの聖布に含ませよ。さすれば聖なる神の力が、汝らを邪悪から救うであろう》
「処女の涙って……使いどころなさすぎだろ」適当にポケットに突っ込む。
〜〜〜
酒場にて、女姿の勇者から生い立ちを聞いたあと。
街の城壁まで送っていく途中、勇者を狙って魔物たちが街に現れる。市民のなかに立ち向かう者はひとりもなく、避難を呼びかける女の姿の勇者に誰も期待しない。誰もが家の中(教会で祝福を受けた光の下)に逃げ込む。
勇者は市民を巻き込まぬため人気のない場所へ走り、ひとりで魔物を倒す。とても強い。しかし、女である自分への人々の態度に、涙を流す。
記者はポケットに入れていたハンカチ……聖布を差し出す。魔法が発動し、聖女の精神体が現れる。三者三様に驚く三人。
聖女は、勇者がいないことにぶーたら言いながらも、涙する娘の苦しみを聞き、慰みと祝福を与える。聖女からの救いに胸を震わせる勇者(気づかれてない)。聖女は、「例の件、頼みましたよ!」と記者に釘を刺しながら姿を消す。
〜〜〜
(王都に戻ってからはプロットどおり)聖女は「勇者の正体を知らないまま女性性を肯定」し、記者の報告を受けて態度を変えるかと思いきや「イェス!」と叫ぶことになります。

ちなみにこの返信、1月30日です。やべえ。

書きすぎて〆切相談

はい。〆切が近づいてきました。

以下は2月7日のツイートです。

マサキさんやー
締切を明後日に控えての進捗報告です。 見事に文字数をオーバーして、まだ2,000〜3,000字は書かないといけません
締切までには、第一稿が終わると思うのですが、完成原稿は難しそうです(とてもオーバーして15枚くらいになりそう)。 そちらはいかがでしょう?

冒頭にも書きましたが、めっちゃゴリゴリ書いてたんですよね……
普段からこのくらい書ければいいのに……創作って本当、思うようにならない……

相談した結果、〆切と枚数は下記のように変更になりました。感謝。

【枚数】ワード初期設定(40字36行)で8枚以上10枚以下 上限撤廃!
【〆切】30日後 = 2月9日(10日提出) 2月12日〆切!

伸ばしてもらったからには、間に合わせねばなりません。
(だいたい、本編を書き始めるのが遅すぎた)

また、枚数の上限は撤廃されましたが、私には「編集さんに感想をもらう」という、もうひとつの目標があるので、いくら筆が乗っていようが削らねばなりません……!

この後、がんばって最後まで書いて、がんばって推敲しました。まる。

最初の読者さんと、タイトル再考

2月11日。
一応、人様に読んでもらえる形になりました。

最初の読者さんは、もちろんマサキさんです。
以下は、提出してすぐに送ってくれた感想です。ありがとう……!!

読んだので感想。長いのでこっちに。

序盤
ミーハーな聖女様だなぁ、これは記者どうするんだろう?
まぁ勇者が男を不思議に思うのはわかる。
夜な夜な出てくる女は勇者の我儘かなんかに振り回されてるのかなぁと思いつつ読み進める。

中盤
女を直撃だー!
って勇者様女!
確かに私お題を「勇者と聖女」って言っただけで勇者の性別指定はしてないな(笑)
勇者が女ならこの記者とまさかのラブロマンスか?
処女の涙……あれ、この展開だと処女って誰……まさか勇者……

終盤
魔物だー!
勇者はやっぱり強かった!
そして聖女はやっぱ聖女様だったのね
聖女様、勇者が女でもよかったのか(笑)

読了後
なるほど。
聖女様の問答で勇者が恋に落ちたようにみえなくもない……
だけどこの聖女様、勇者が自分のものだという思い込みもすごいような。
勇者登場時から細身の男ってところは強いのかって引っかかってはいたけど、男装だったのかなるほど。
ならば勇者の美貌も中性的な(あるいは女性的な)魅力というか、まぁ女性って中性的に見える人好きだったりするよね!宝塚もそんな面ある気がするし!勇者様は濃いメイクしてるわけじゃないだろうけど。
記者くんは今まで他人のスキャンダルを売りにしてきたんだからある程度泥被るのは当然かなって感じもするけど、作中ではこの子女難の相があるのでは?って感じもしたし、こそこそせず割と堂々と取材するとこ嫌いじゃないので、今後幸せになってほしいなとも思う。(不幸事に突撃取材するマスコミは嫌いだけど、彼は真偽をただしに行ってるだけのように感じたので)
勇者の仲間になるのかぁ……今後も彼は苦労しそうだなぁ……頑張って幸せを探しておくれ。

いやあ、めちゃくちゃ面白かったです。
スピード感とテンポの良さと驚きと。
内容すっごい好きです!
気になることで言えば、タイトルだと聖女様視点なのかなと思ったら第三者だったことかなぁ……鍵括弧あるのでセリフだったんだなって思うけど、昨今の風潮だとタイトルがセリフの場合、主人公の発言がタイトルって場合が多いのでここでモヤッとする人いそうだなぁと思いました。
送るコンクールがわからないのでこれでいい気もするし、ここが引っかかる気もする……どっちとも取れないなぁって感じてます。

以上、感想でしたー!

感想、めちゃ長い!
ありがとう〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!

ちなみに、この時点でのタイトルは『私の勇者様に限ってそんなことあるはずないんですけど探ってきてください』でした。たしか。

pixiv文芸なら審査員は一般なので
「(現タイトル)」と命じられました
みたいに視点者を明確にした方がよいかもしれない
女性向けなろうにはなってると思うよー!

ここにマサキさんから、応募するコンテストを踏まえてのアドバイスをいただき、タイトルをさらに変更することに……重ね重ねありがとう〜〜〜〜〜!!!!!

pixiv百合文芸コンテストにエントリー!

2月28日。
さらに推敲を重ねて、いよいよ投稿サイトにアップすることに……!

表紙を設定してから「タイトルやっぱ長えな」と思ったのは秘密です。

編集さんからの感想で百合の奥深さを知る

うおー。だいぶ息切れしてきましたね。
おれ、これ書き終わったらソッコー寝るんだ……

最後に、完成原稿を読んでいただいての、編集さんの感想をご紹介したいと思います。

ヒダマル(編集)
拝読しましたので、感想をお伝えします。
するする読める1万文字でした。基本的な文章力が安定していると伝わります。百合の間に挟まる男ならぬ、百合の間を橋渡しする男ですね。この状態が「間に挟まってる」と取られるか否かで評価が変わってきそうです。百合と男性視点の相性はやっぱり悪いかなぁと思います。いっそ三人とも女性にする手もありますが、それだと聖女が依頼しなさそうですね。記者も女性だから勇者に近づけたくはないものの腕は買っているとともに、裏切ったら死ぬ呪いをかけておくなんかでも選択肢としてはアリです。
結末は、聖女さんアナタのこと好きみたいですよと勇者に伝えない理由は特にないので、その辺りを整合させて「一言伝えられればこの茶番から抜け出せられるんだけど(もう両思いっぽいのは分かってるし)呪いのせいでできない」としてもいいですね。勇者のほうからも「聖女さんって想い人はいるのでしょうか」と相談を受けているとか。この先を予感させるような結末にもう少し針を振らせるのは良い手だと思います。賞レース的な弱点としては「カテエラの可能性」がネックで……、百合文芸小説コンテストは「文芸」要素が強く、コメディは残りにくい傾向にあります。

青字は、私がなるほどなあと思った部分です。

私これまで「百合の間に挟まる男」って意識したことがなかったんです。
言われてみればたしかに、女の子同士のふれあいを読みたくて百合を読むのに、間に男がいるのは……読者には「邪魔」っすよね、そうよね……

あと、コンテストのカテエラについて。
これは――まぁ、アップしたときの自作の浮き具合でなんとなくわかってました。

しかし私は書きたいものを書いて、満足してるので、まあ、いいかなと思ってます。

あとはもう、読んでくださった読者さんが、少しでも楽しんでもらえれば(笑)

長々とした日記になってしまいましたが、最後まで読んでくださってありがとうございます。
興味を持たれた方、ぜひお時間あるときにでも読んでみてください〜\(^o^)/

【追記】
文字数を調節してカクヨムコン短編にも参加してました。(*^^)v

「読んだよ!」と教えてくれると嬉しいです。
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